「#04 中小企業×DXとは:持続可能な地域経済を創る」では、そもそもDXとは何か、中小企業においてDXはなぜ重要なのかについて解説しました。これからの時代を見据えた中小企業にとってDXは避けて通れないテーマです。
しかし、実際に取り組む際にはDXの進め方に苦戦し、なかなか成果に結びつかないケースも少なくありません。
私たち地方創生・フェアネス共創研究所では、こうした課題を抱える企業に寄り添いながら、DX推進に関する支援の取組を拡大していきます。
このコラムでは、DXを進めていく上で落とし穴となる部分を整理し、変革を着実に進めていくためのポイントをお伝えします。
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DXを形だけの取組で終わらせないためには、「なぜDXに取り組むのか?」という問いに明確に答えられることが必要です。
この問いへの答えこそが、「実現したい未来像」です。
多くの企業でDXがうまく進まない背景には、「目的なき技術導入」があります。
本来は手段であるはずのデジタル技術が、「何か新しいことを始める」ための目的そのものになってしまう。
その結果、経営ビジョンと現場の意図がかみ合わず、期待した成果が得られないままプロジェクトが終わってしまうケースが少なくありません。
DXは本来、5年後・10年後に企業がどのような姿を目指すのかというビジョンを出発点とし、その実現に必要な業務やビジネスモデルの変革を具体的に描くことから始まります。
どのような価値を顧客に届けたいのか、
そのために何を変えるべきなのか。
まずはこの未来像をしっかりと描き、課題を整理したうえで必要な手段として技術を位置づけていくことが大切です。
そのプロセスを深めていく上では、必要に応じて外部の視点も取り入れながら対話を重ねていくことが有効です。
現状と目指す未来とのギャップを丁寧に可視化し、技術導入が「目的」ではなく「手段」になる。この考え方こそが、DXを成功に導くための出発点になります。
DXを単なる号令や技術導入で終わらせないためには、経営者自身が変革の先頭に立ち、取組を動かし続けるリーダーシップと継続力が欠かせません。
DXは経営戦略と直結する課題である以上、経営層がその必要性を深く理解し自らが動く姿を示すことが組織全体を巻き込む力になります。
ただし、変革は一足飛びに実現できるものではありません。
いきなり大きな改革を目指すのではなく、まずは身近な取りかかりやすい業務や課題から手をつけていくことが重要です。
たとえば、個別業務のデジタル化や、既存データの活用といった小さな取組から着手し、試行錯誤を重ねながら少しずつ取組の幅を広げていくことが現実的な進め方です。
このような積み重ねと並行して業務プロセス全体やビジネスモデルの見直しを進めることで、徐々に組織の意識や文化にも変化が生まれていきます。
また、こうした長期的な取組を支えるためには、自社の力だけに頼らず必要に応じて外部の知見や支援を柔軟に取り入れていくことも大切です。
伴走者となるパートナーと協力しながら、ノウハウを蓄積し人材を育てていくことも必要となります。
リーダーシップと継続力。このふたつが、DXを前に進める力になります。
このコラムでは経済産業省のレポートや手引きを参考にしながら、効果的なDXを行うためのポイントを紹介しました。
中小企業がDXを成功させるには、「技術導入ありき」ではなく経営課題の解決や将来ビジョンの実現を出発点とすることが不可欠です。
そのためには、中長期的な視点や経営者自身のリーダーシップを持った継続的な取組が求められます。
ビジョンの具体化や取組の継続には、時に外部の視点や対話が大きな助けになります。
地方創生・フェアネス共創研究所では、経営者の想いに寄り添いながら、DX推進の伴走パートナーとして支援を拡大していきます。
出典
・経済産業省「デジタルガバナンス・コード 実践の手引き2.1(要約版)」, p.2, 22-26, 2025年8月26日参照
・経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025(DXセレクション2025選定企業レポート)」, 2025年3月, p.6-14
・経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」, 2020年11月9日策定, 2024年9月19日改訂
・独立行政法人情報処理推進機構「「DX 推進指標」とそのガイダンス 」, 2023年12月